オルファ:俺 セフィー:トロピウス ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 12月25日―クリスマス― 本来はキリストの誕生を祝うキリスト教徒の祭りだったこの日は、 今日では全く違うイベントになっている。 恋人達が愛を語り合ったり、子供達にプレゼントが届いたり・・・ どの家からも、楽しそうな声が聞こえてくる。 そんな誰もが少し幸せになれる日、俺はうちの屋根に上って星を眺めていた。 今日は星が綺麗だ。 一般にはホワイトクリスマスが一番幻想的だというけど、こういうのも悪くないな。 そんなことを考えていた時 「あっ、お兄ちゃんこんなところにいたんだ」 トロピウスの少女が屋根に上ってきた。 いや、正確には飛んできた、か 「もう、いつの間にかいなくなっちゃうから心配したんだよ?」 「ああ、ごめんな、セフィー」 ちょっと怒った所も可愛いなぁと思いながら俺は謝る。 俺はうちでやっていたクリスマスパーティーを抜けてここに来ていたのだった。 耳を澄ませば、みんなの笑い声が聞こえてくる。 「みんなでわいわい騒ぐっていうのは嫌いじゃないけど、なんていうかこういう所のほうが落ち着くんだよ」 「でも抜けるんならちゃんと一言言ってよね」 「ごめんごめん、でも今日の空は、抜けてでも見に来る価値はあったかな・・・」 「もう・・・でも、そうだね。こんなに綺麗な星空久しぶり・・・」 そう言って、セフィーも俺の隣に座る。 そうしてしばらくの間、2人で星を眺めていた。 「ねぇ、お兄ちゃん」 不意にセフィーが俺にもたれかかってきた。 「どうした? セフィー」 俺はその頭を優しくなでながら聞く。 「あのね、わたしさっきのプレゼント交換とは別にお兄ちゃんに渡したいものがあるんだ」 「へぇ、なに?」 「えっとね・・・はい、これ」 そう言ってセフィーが取り出したのは白い紙袋。 「開けていいのか?」 「うん」 袋に入っていたのは緑の毛糸のマフラーだった。 「これは・・・」 「えへへ、わたしの手編みなんだよ」 「そうなのか、ありがとう、大事にするよ」 「うん♪」 そのマフラーはセフィーの温もりが移ったように暖かかった。 「じゃあ俺も」 俺はポケットに入れてあった小さな箱を取り出す。 「はい、セフィー」 そのふたを開け、セフィーに差し出す。 「え・・・これって・・・」 箱に入っているのは小さな指輪、そんなに高価なものじゃないけど、綺麗なエメラルドがセフィーにはきっとよく似合うと思う。 「そうだな、結婚、はまだ先になりそうだし、婚約指輪、かな」 「お兄ちゃん・・・」 そういうセフィーの目には涙が浮かんでいた。 「うれしい、ありがと・・・」 「お、おい、泣くなよ・・・」 「だって、だって・・・」 俺はそのまま泣き出してしまったセフィーを抱きしめて、頭をなでた。 「・・・落ち着いたか?」 「・・・うん、ありがと」 「冷えてきたし、そろそろ戻るか?」 俺の言葉にセフィーは首を横に振る。 「ううん、もう少しこのまま・・・くしゅっ」 「ほら、くしゃみしてるじゃないか。風邪引くぞ」 「大丈夫、さっきのマフラー貸して」 セフィーは、マフラーを俺の首と自分の首にかける。 「こうやって一緒に巻けば、ね?」 「一緒に巻くには短いんじゃないか?」 「いいの、これで」 そう言って俺に抱きついてくる。 「ね、くっついてれば十分足りるよ」 「・・・そうだな」 聖なる夜、満天の星の下で、俺達は唇を重ねたのだった。