オルファ:俺 ウラ  :Re・ロケット団(以下RR団)ボス ミキヤ :RR団幹部 アクア :シャワーズ ミキヤの手持ち ラフィス:RR団研究員 ルシア :オルファの部下 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― カツッ カツッ カツッ カツッ 暗い通路に足音が響く。 あの日、ウラの手を取ってから5年が経とうとしていた。 本部の守護、裏切り者の抹殺、敵対組織の掃討、それが俺の与えられた仕事だった。 そしてこの5年間、いわれるままに任務をこなしてきた。 今まで手にかけた人数など、もう数え切れない。 その冷酷さからか、黒服に大鎌という外見からか いつからか『死神』という二つ名で組織内でも恐れられるようになった。 ・・・ふん・・・死神、か・・・ 俺は自嘲気味に笑う。 ・・・まぁいいさ、俺は俺の仕事をするだけだ。 ウラの言う『神への復讐』が終るまでな。 どうせ、それ以外に生きる理由も目的も俺にはないんだからな・・・ ―黒の記憶―    第5章〜暗闇の底で〜 「よう、オルファ」 不意に後ろから声をかけられる。 誰かは見なくても分かる。ここで俺にこんな話し掛け方をするのは1人しかいない。 「ミキヤか・・・」 振り返るとそこには予想通りの人物――シャワーズを連れた黒マントの青年が立っていた。 「・・・何の用だ・・・」 「まぁそう邪険にすんなよ、ちょっと聞きたいことがあってな」 「・・・なんだ」 俺の邪険にした返し方にミキヤはやれやれと首を振る。 「まぁいいや、前から気になってたんだが、お前の鎌はどうなってんだ?」 「これのことか・・・」 俺は自分の身の丈ほどもある大鎌を取り出す。 「あぁそれだ、そんなでかい物いつもどこに持ち歩いてるんだ?  今も持っているようには見えなかったが・・・」 「・・・これはな『みがわり』の応用、らしい」 「らしい?」 俺の言葉にミキヤが怪訝そうな顔をする。 「これはラフィス博士の見解だからな」 「・・・ラフィス博士・・・あぁ、お前の力の研究の責任者か・・・」 ミキヤはなるほど、とうなずく。 「しかし、みがわりの応用ねぇ・・・」 「・・・まれにみがわりで作り出した分身を足元でボード状にすることでなみのりが使えるピカチュウがいるだろう?  あれと同じで、俺の場合は鎌の形に実体化してるだけ、ということらしい」 「ほう、なるほどな・・・」 納得したというようにミキヤは腕を組む。 やれやれ、やっと終ったか・・・ 「・・・聞きたいことはそれだけか」 「あぁいや、もう1つ」 ミキヤは悪いなと笑う。 まだあるのか・・・ 俺としては早く終って欲しいんだが・・・ 正直こいつと話すのは好きじゃない 「・・・なんだ・・・」 「だからそう邪険にすんなって・・・  まぁいいや、うちの幹部はほとんどが訳ありだって話を聞いたが、そうなのか?」 「・・・知らん」 いきなり何の話だ・・・? 俺は怪訝に思いながらも答える。 「だが、そうだろうな。そうでなければ『神への復讐』なんて思想の元に集まらんだろう」 「なるほど、確かにな。で、お前はどうなんだ? オルファ」 ・・・ふん、そういうことか・・・ 「・・・それを聞いてどうする」 「まぁいいじゃねぇか、ちょっと気になっただけだよ  で、どうなんだ? その力のせいで迫害されたとかか?」 「・・・俺が答えると思っているのか?」 「違うか・・・なら・・・」 俺の言葉など気にしてないようにミキヤは続ける。 「科学者の親に実験体にされた、とか?」 「・・・なんだそれは・・・」 「実際そういう奴はいるらしいぜ? で、実験中に力が暴走して家族を殺してしまった、とかな」 っ・・・・・・! 力が暴走して、家族を・・・ 俺の一瞬の動揺をミキヤは見逃さなかった。 「ふん、当たりか? ったく子供を実験体にするなんてひどい親も――っとアクア、手出すなよ」 気がつくと、俺はミキヤの首に鎌の刃を掛けていた。 俺に攻撃しようとするアクアをミキヤが止める。 「だまれ・・・父さんを、そんな奴らと一緒にするな・・・! 」 「なんだ、違うのか? てっきりお前の力はそういう実験で身についたのかと思ってたぜ」 「ふざけるな・・・! 俺の力は生まれつきのものだ・・・!」 「ふん・・・ならなぜお前はこんな組織にいるんだ?  お前の力のことを知っていてなお育ててくれた親なら、その力がこんなことに使われることは望まないと思うけどな?」 「だまれ!」 俺はミキヤに掴みかかっていた。 今までおさえてきた感情があふれ出してくるようだった。 「母さんから受け継いだ、誰かを、何かを守るためのはずのこの力で!  大切なもの全てを壊してしまったあのときの俺の絶望が、お前に分かるってのか!」 「・・・・・・・・・」 「っ・・・・・・・・・」 俺はミキヤを乱暴に放すとそのまま背を向けて歩き始めた。 一刻も早くミキヤから離れたかった。 「なるほどな、反応したのは『力が暴走して』の方か」 去っていくオルファの背中を見つめながらミキヤは呟いた。 「それにしても、大切なもの全て、ね・・・  お前が大切に思うものがもう無かったとしても、お前を大切に思ってる奴はいないって事は無いんだぜ・・・?  ま、俺には関係ないことだけどな」 バタンッ!! 自分の部屋のドアを乱暴に開ける。 たったあれだけのことであそこまで取り乱すとは・・・ よりによってミキヤ相手に・・・ 俺はそのままベッドに寝転んだ。 今日はこのまま眠ってしまいたかった。 が、そういうわけにはいかなかった コンコンコン 「失礼します、オルファ様」 「・・・ルシアか・・・」 入ってきたのは小柄な薄紫の髪の青年、少年と言ってもいいかもしれない。 組織内唯一の俺の直属の部下であるルシアだ。 唯一、というのは基本的に掃討隊の仕事は俺1人で手が足りるため特に人員を必要としないのと 団員のほとんどが俺を恐れていて近づこうとしないからだ。 そんな俺に好き好んで仕えているルシアはある意味変わっていると言える。 「・・・どうした」 「ラフィス博士がお呼びです」 「・・・分かった、すぐ行く」 「はっ」 一度敬礼をしてルシアは去っていった。 ちっ・・・仕方ないな・・・ 俺は重い体を起こし、地下の研究所へ向かった。 コンコンコン 「失礼する」 俺は返事を待たずに中に入る。 「やあ、オルファ君か」 白衣を着た銀髪の男―ラフィスが振り返る。 「どうしたんだい? ずいぶん機嫌が悪いみたいだけど」 「関係ない・・・それより何のようだ」 「まぁいいか。君の力の測定器の小型化に成功したんだ」 そう言ってラフィスはブレスレットのようなものをとりだした。 「これをつけていてくれればいちいちデータ採取のためにこっちに来てくれなくても済むし  僕達も常に力の測定が出来るからね」 「・・・なるほど・・・」 「まぁでも微調整は必要だと思うから  強化萌えもん達の実験も兼ねてちょっと模擬戦をやってもらおうと思ってたんだけど・・・」 「けど、なんだ」 「今の君だと相手を叩き潰しかねないからね。また今度お願いするよ」 「ふん、そうか・・・」 そう言ってラフィスに背を向けた時、研究室のドアが開いた。 「失礼します」 入ってきたのは見慣れた紫の髪。 「ルシアか・・・今度はどうした」 「はっ、ウラ様より任務のご伝言です」 「そうか・・・なんだ」 「研究員の1人が機密情報を盗んで脱走したとのことです」 「そうか、分かった」 俺はラフィスの方に振り返る。 「丁度よかったな、微調整を兼ねた実践データが取れる」 「・・・そうみたいだねぇ」 「ふん・・・」 そのまま、俺は屋上に向かってテレポートした。