『夢の中にて』

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ぽつんと、一人で立っていた。
際限なく広がっている世界、何処が端なのかも分からない黒い世界の中で、私は一人立っていた。
空には星が輝いて、地面には水が広がっている。私を中心にして波紋が穏やかな水面を揺らす。
まるで宇宙の中に居るようだった。ぐるりと見渡せば、そこには彗星が飛んでいる。光が闇から闇へと渡り歩いては消えていく。
……ぴちょん。
小さな音が聞えて、私は振り向く。
他に誰かがいると思って、一人ぼっちは嫌だと思って、私は振り向く。
居たのは人ではなく、たまごのような水の塊。宙に浮いていて、中には黒い影が一つだけあった。
「――え?」
私はぞっとした。その黒い影を見て、ぞっとした。
その黒い影は――宇佐見蓮子だった。



『夢の中にて』
著:riverside

 

2010.11.28.境界から視えた外界
封-24 川の流れに身を任せ
サイズ 文庫
頒布価格 500円

 

 

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